若女将コラム

日々西屋と山を縦横無尽に駆け巡る湯守兼若女将のかなりマイペースなコラムです。
内容はすっ飛んでいます(というかほぼ西屋に関係ない話題ばかり)。ぜひ楽しんで下さいませ。

若女将コラム

好きな音楽のこと ~声楽系~

2019.12.28

音のある生活 33「ボーダレス・ヴォイス!」

 こんにちは。

クリスマスはシュトレンの代わりに頂き物の柚子で
ひたすらジャムを作っていた若女将です。
柚子の香りは大好きです。凍てつく冬の寒さも華やかに解れる
ような気がします。ええ、もったいなくてお風呂(温泉)になんて
投げ込めませんがな。

さて旅館業的怒涛の年末年始が既に始まっているわけですが、
今年最後のコラムですので、「どうやって作ってるの?」
「これだけお土産で売っていないの?」お客様からよく質問される
冷汁の西屋オリジナル"そばあられ"トッピングについて
これまた何の前触れもなく解説を爆弾投下したいと思います。
(↑もはや前振りじゃない)

実はこうやって作っています。



①生そば(むき実)を仕入れる。



②板前さんが素揚げする。



③バットの上で冷ます。



以上。簡単ワンツースリー。

手作りですから保存料は一切使用していないのはもちろんのこと、
お土産販売は致しておりませんので予めご了承ください。
冷汁にかけて混ぜて食べるのが西屋流ですが、
そのまま酒のつまみにポリポリされる方や、
ふりかけ代わりにご飯にかけるうちの息子のような猛者まで楽しみ方色々。
ぜひ食事処でおつなアレンジに挑戦してみてください(?)。



というわけで2019年最後の音楽シリーズはこれで〆だ!
33回。燦燦と輝け!!「ボーダレス・ヴォイス!」

"Invocation"

ANUNA(1994)


※サムネイル↑クリックで公式サイト(英語)にリンク。
"About"では、2017年に東京オーチャードホールで上演された
能「鷹姫(アイルランドの小説)」の様子が視聴できます。
能楽×声楽の異文化スーパーコラボ!

彼らのCDはどれも載せたいくらいお薦めなのですが、
特に好きな曲が詰まっているこちらの2ndアルバムをピックアップ。
コンプリート無理だよ!という方はThe Wild Song と
Ich Am of Irlaund、My Lagan Loveだけでも聴いてみてください。
(公式サイトで聴けマス)別のアルバムですがSanctusもおススメ。
どの曲もおススメ。

ところでアヌーナって何?という方にざっと解説いたしましょう。

アイルランドの音楽家・作曲家、マイケル・マッグリン率いる珠玉の
声楽グループ、アヌーナ。30年近いキャリアの中でメンバーを
常に変えながら(ケルティック・ウーマンで一躍有名になったソリストの
メイヴも一時期在籍していました)、歴史に埋もれかけていた古の聖歌や
地元アイルランド地域の伝統的な歌曲を復活させ、神秘的なハーモニーで
世界に感動を与え続けています。
初めて彼らの歌を聴いたのはリバーダンス全盛期の頃でした。
アンビエントな和音の流れ、透明感のあるソプラノと後から続くアンサンブル…
アイリッシュハープの伴奏やオーケストラをバックにした曲もありますが、
多くがコーラスのみの構成。例えばO Maria。久遠の闇の中で揺らぎながら輝く
七色の光のように、混声合唱のみで複雑に織りなされる奇跡の音楽に
鳥肌が立つこと間違いなしです。
人の声はこんなにも美しいものなのだと改めて気づかされます。

人類おそるべし(意味不明)。

リーダーのマイケルは作曲やアレンジの他PVも自分でプロデュースいる
わけですが(PVやメンバーの舞台裏などを収録したDVD版のおまけでは、
一曲歌い終えた後小走りでカメラのスイッチを切りにやってくるマイケル氏の
キュートな姿が拝める(笑))どのPVも吸い込まれるほど美しいのなんの。
アイルランド(の極めて無人の地)にぜひとも行きたくなってしまいます。

またアヌーナは上記の能楽コラボ然り大変な親日家で、何度も日本公演を
開催しています。東日本大震災の折には、福島県いわき市の小学校に
わざわざ慰問演奏にも来てくれていました。
雪やこんこんを日本語で熱唱。なんていい人たちだ。。
近年はスクエニのゲーム「ゼノギアス」サントラにも参加しているようなので、
気になる方はチェックしてみてください。


ANÚNA "Mononoke Hime" / ANUNA

ちなみに↑のようつべは、

2015年に発売されたアルバムにも収録されている「もののけ姫」
アヌーナver.です。日本語の発音が完璧なのに驚くのはもちろん、
オリジナルのエッセンスを失わず、さらに素晴らしいアカペラに
アレンジしています。

静かに年が変わりつつある冬の夜、この世ならざる神秘の歌声で
一年の疲れを癒してみてはいかがでしょう。

PS:どーでもいい余談ですが、アヌーナをGoogleで検索しようとしたら
「アヌーナ米良」ってキーワードが出てきて不意打ち腹筋崩壊しました。
もののけ姫のせいだ(笑)

皆様どうぞよいお年をお過ごしください!

2017.12.22

音のある生活 5 “Ubi Caritas”



いよいよ年の瀬が迫ってきました。
子供たちも明日から冬休みです。

かたや期限の迫った仕事は山積みになる一方で焦る焦る。
今日はそんな気持ちを代弁するつもりで

「仕事(と家事育児)に追われて青筋ピンチなフルタイム人間でも
一瞬でアドレナリンMAXにしてくれるヘヴィ系」
(長っ!)

をピックアップしようかと思いましたが(笑)
クリスマス間近に(一例:M.マンソン)はさすがに躊躇…。
というわけで、180度趣向を変えて聖歌をチョイスしました。



本日は「Ubi Caritas(ウビ・カリタス)」特集です。

Ubi Caritasは、直訳するとラテン語で「(神の)慈しみのあるところ」という意味。
10世紀頃に編纂された由緒ある聖歌の一つです。

キリスト教徒ではないのであまり詳しくはありませんが、
Ubi Caritasは復活祭の直前の木曜日(聖木曜日)に歌うグレゴリオ聖歌が元になっています。

Ubi caritas et amor, Deus ibi est.

Congregavit nos in unum Christi amor.

Exsultemus, et in ipso jucundemur.

Timeamus, et amemus Deum vivum.

Et ex corde diligamus nos sincero.

Ubi caritas et amor, Deus ibi est.(wikipedia(英語)より一部抜粋)

要約すると、
「神の愛と慈しみのあるところに神様はおられる。
私達はその愛のもと一つに集まる。喜び、畏れ愛せよ、生きている神を…」
キリスト教における神の在り方を見事に結晶化したような傑作で、
人気もあったためか独立して歌われることも多く、
現代に至るまで異なる宗派や複数の音楽家によって編曲を加えられています。

そのなかでも私が特に好きなバージョンをいくつかご紹介したいと思います。

1.原典版


天使の歌声~アヴィニョンからの聖歌(2010)

まずは原典版。フランス・アヴィニョンにあるラノンシアション大聖堂の
女子修道院聖歌隊が歌う一枚です。全曲にわたり合唱隊を2つに分けて交互に歌う
古式のアンティフォナ(交誦)形式をとっており、教会らしい厳かな歌声が
何とも素晴らしい。聖歌隊にしてはわりと珍しい女声という点を除けば、
ほぼ1000年前の原曲の響きを楽しむことができます。
(余談ですが、映画「サウンドオブミュージック」の冒頭でもレアな女声聖歌が聴けますぞ!)
他にもプロの教会聖歌隊が歌う原曲版アルバムは数えきれないほど世にありますが、
どれもなぜか和音を含む華やかコーラスに編曲されているものがほとんどで、
かえって神聖さが欠けてしまっている(失礼…汗)気がします。
せっかくコーラスにするのなら原曲をいじらないほうが良かったんじゃないかなぁ…

もともとグレゴリオ聖歌は単旋律の歌なので、素朴さの中に光る神聖さこそが
その真髄といえます。約30年前のグレゴリアンチャントブームをご記憶の方、
どんな歌か気になった方は、まずはぜひ原典版を聴いてみて頂きたいと思います。


2.テゼ共同体編曲版


Laudate Omnes Gentes(2003)

宗派を超えた心の和解を目指し、第二次世界大戦のさなかに登場した
キリスト教一派、テゼ共同体による祈りの歌バージョン。

テゼ共同体…聞き慣れない方も多いと思います。
現在フランス・ブルゴーニュ地方に本拠地(?)を置く小規模の男子修道会です。
止むことのない戦争や人々の諍いに愁いを抱いた一人の若い修道士が、
せめてカトリックとプロテスタント同士だけでも手を取り合おうと始めた
小さな宗教活動が発祥といわれています。
以後、テゼ村は世界各地から若者たちが集う“聖地”となり、
毎年10万人を超える人々が集まるのだとか。

そんないきさつから、共同体を構成する修道士たちの国籍も宗派もさまざま。
彼らが歌う聖歌は「シンプルで短い旋律を繰り返す」スタイルに発展し、
知る人ぞ知る「テゼの歌」と言われるようになりました。
その中の一曲がこちらというわけです。
聴くとよく分かりますが、原曲の最初の歌詞(1行目)を繰り返し歌っているだけで、
すぐに一緒になって歌えるほど平易なメロディーです。
これがまた子守唄のような優しい温かさに満ち溢れていて、
古今東西数あるUbi Caritasの中でも「平和」オーラは最強クラス(だと個人的には思います)。
夕餉の灯りに包まれた家や教会で、
家族やお友達と手をつないで自然と輪になって歌いたくなる…そんな素晴らしいアレンジです。

他の歌も短いフレーズの繰り返しなので、ラテン語の勉強にもいいかも??



3.コニー・ドーバー版


The wishing well(1995)

コニー・ドーバー(Connie Dover)はアメリカのシンガーソングライターで、
カントリー&ケルトミュージックをメインとするアーティストです。
安定した歌唱力と伸びのある歌声が特徴で、
これまでに5枚のアルバムをリリースしています(最近は休止ぎみ?)。
ケルト音楽に長年親しんでいる私でもかなり最近になってその存在を知った
コニーさんですが、活動スタートは1990年代とかなりのキャリアがあるようです。

そんな彼女が歌うUbi Caritasは、
例えるなら暮れなずむ大草原で一番星を見上げながら祈りを込めて歌っているイメージ。
あるいはオーロラや流星が降り注ぐ北の雪原をどこまでも駆けてゆくような感じ。
なんとも透き通るような美しさです。
時折バックに入るティンホイッスルやバグパイプがまたノスタルジックでいい。
風に吹かれて舞う草や雪のさやさやという音や匂いすら醸し出すような、
それでいて原曲の荘厳さを損ねることがない稀有なアレンジバージョンです。


4.オードリー・アサド版



Inheritance(2016)

こちらはオードリー・アサド(Audrey Assad)によるアレンジバージョンです。
オードリーはアメリカ人の母とシリア人の父の間に生まれ、
宗教色の強い家庭で育った若手のコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックアーティストです。

オードリー版Ubi Caritasはいい意味でかなりの変化球。
歌声はどこか甘酸っぱく、旋律もポップとわらべ歌を足して2で割ったような
(表現が難しいのですが)いつの間に口ずさんでしまうほど親しみのある旋律で、
そもそも宗教曲だということを完全に忘れるほどドラマチック。
RPGの金字塔:FFの挿入歌(中盤の大事な仲間との別れや物語の分岐点、
クライマックス直前の決意の場面(?)など)に採用されても違和感ありません。
FFアレンジアルバムの一つ「まほろば」や幻想水滸伝のサントラにも似た、
無国籍系民族音楽を思わせる不思議な曲に仕上がっています。
瑞々しい歌声もとても素敵。
植松さーん、ぜひ彼女をゲストアーティストに迎えて下さい―(笑)


5.オラ・イェイロ版


Ola Gheilo(2016)(digital music)

コンテンポラリー色を少し巻き戻して、オラ・イェイロ版をご紹介します。
オラ・イェイロはノルウェー出身で現在アメリカ・NY在住の若手宗教音楽作曲家です。
おそらく彼のアレンジしたUbi Caritasが世界的にも一番有名でしょう。
ヴォ―チェス8というイギリスの8人組アカペラ・グループが歌ったものが
広く知られていますが、彼らのアルバム(Lux)内のソロバージョンよりも、
オラ・イェイロ自身がピアノ伴奏しているこちらのアルバムのバージョンのほうが
個人的には好きです。彼の上品でどこか艶のあるピアノが好きすぎる(笑)。

因みにこのアルバムの他の曲もとてもいい曲ばかりです。
管弦楽曲やアカペラもあり、聴いていて飽きません。アルバム自体もオススメです。


5.ポール・ミーラー版


Jubilate: 500 Years of Cathedr(2017)

声楽界のグスタフ・マーラー(と私が勝手に呼んでいる)ことイギリスの作曲家、
ポール・ミーラーがアレンジしたUbi Caritas。
数あるUbi Caritasの編曲の中でも私が最も好きな“神曲”です。
彼のアレンジ版は、2011年に行われたイギリス王室のウィリアム王子と
キャサリン妃のロイヤルウェディングでも採用され、世界的に有名になりました。
ご存知の方もいらっしゃると思います。
会場となったウェストミンスター寺院にその荘厳な歌が響き渡った当日の様子は
Youtube(高画質)でいつでも観られますので、
よろしければ↓のリンクからご覧になってみて下さい。


Paul Mealor's Ubi Caritas - Royal Wedding Choral Motet

この名誉ある採用から一躍有名になったポール版。
ウェストミンスターしかり各地の教会合唱団やテネブレ
(イギリスの声楽アンサンブル)などもこぞって歌っていますので、
その微妙な違いを聴き分けてみるのもまた良いかと思います。
しかし個人的にイチオシなのは上記のブルーの1枚。
こちらはセイント・ポール大聖堂少年合唱団による古今の聖歌を収録したアルバムです。

このアルバムに収められているUbi Caritasは、一言で言うと「宇宙」
なにそれ?!と思われるかもしれませんが、
ほんとに他に言い表しようがありません(笑)

録音環境がよほど秀でていたのか、少年合唱という透明度も深度もあるピュアな音色が
素晴らしいのか、とにかく他のどのアーティストにも似て非なるパワーを秘めています。
そのパワーたるや、もはや天国を通り過ぎてやたら高次元のどこかにアセンションできそうな
(ホントにできたら大変)気合いひとつで重力波さえキャッチできそうな(LIGOも苦笑い?)
神々しすぎる響きなのです。
今宵運よく超新星爆発を見つけたらぜひBGMで聴きたい(錯乱)。
皆さんもアルバムに触れる機会があったらぜひ聴いてみて下さい。
因みにポール・ミーラーは他にもコーラスを中心とするアルバムをリリースしていますが、
テネブレと共演した「A Tener Light」というアルバムでは、このUbi Caritasと同じ
旋律で違う歌詞を歌った曲があります。眩さは控えめですが、清らかな夜明けのような響きです。
こちらもオススメよ♪


というわけで、クリスマスにぴったりのUbi Caritas特集いかがでしたか?
今回もマニアック炸裂ですみません!
誕生から1000年もたってこうして様々な形で歌い継がれるUbi Caritasは
つくづく人々に愛されている歌だな、と思います。

人類の歴史がどこまでこの先続いていくかは分かりませんが、
(ドレイク方程式の"L"が保たれる限り、目に見えない神様を信じる心が失われない限り)
末永く歌い継がれてほしい聖歌の一つです。

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