若女将コラム

日々西屋と山を駆け巡る湯守兼女将による、自由奔放すぎるコラム改めエッセーコーナーです。
人生は奇想天外に生き抜こう。趣味のことや日々思う事etc...ほぼ西屋に関係ない話題ばかり載せています。

Dr.スランプ女将ちゃん(?)-後編その2

前置きナシで一気書き。

 


4.きっかけは、だいたい突然やってくる

あれこれうだうだ悩み、いよいよ坂道をころげつつあった
去年の暮れのこと。旅行作家で旅行に関するライターをされている
野添ちかこさんから、突然一通のメールが届きました。
内容は、旅行雑誌「旅の手帖」への掲載依頼でした。
メッセージの中で野添さん曰く、
「全国でも女性が湯守をしている宿なんて殆ど聞いたことがない。
そのスタンスに深く関心を抱いたので、連載コーナーで旅館…
というか、あなたのことを紹介させてほしい。」

私???

きっかけは、他でもない、このエッセーを読んだことだというのです。

実はこれまで何度か、「このページをまとめて本にしたら?」と
声をかけて頂いたことがありました。
その時は「んー、せいぜい自費出版ならありかもしれないけど、
そんな中身あるコンテンツじゃないし、売れるようなもんじゃ
ないだろうから無理…」
と、まるで本気にはしていませんでした。

しかしよく考えたら、数年前にもNHKのニュース番組で湯守について
取材を受け、詳しく取り上げて頂いたことがありまして。
やはりこちらも、きっかけはこのエッセーでした。

私にとっては純粋な驚きでした。こちとらど素人、
相手はプロのライターさん。
一体ぜんたい何が彼らの目に留まった??
いくら考えても、本当に分かりませんでした。


3.何のためにエッセーはじめた?なぜ続けた?(③)

ここで漸く前回の③の回収です。
初心を思い出すために、一度時間を巻き戻してみました。
そもそもこのエッセーコーナーをなんで始めたのか。





↑栄えある(?)我がエッセ第一号。
毎週火曜日更新とか猫の日常とか堂々と宣ってる。
ウソつきめー(笑)!!

このページは、西屋のサイトが現在のデザインになった直後から
存在していました。とりあえず地元のお店やスポットを紹介して
いこうかな~、くらいの軽い気持ちで引き受けたのが最初です。
ただし私は、このコーナーを受け持つにあたって、
一つだけ心に決めていたことがありました。それは、
「絶対に旅館らしい話題は書かない!」こと。

例えば「季節の料理が〇〇になりました~」とか
「地元の郷土料理のご紹介」とか
「館内をリニューアルしました~」みたいな、
どこにでもありがちな平凡な話題は絶対に、
絶対に載せないと内心誓っていました。だってそんなつまらん
内容じゃ、誰よりも私が飽きて続かなくなる。そう判断したからです。

そもそも自社HPって、
自分の会社やお店の存在を遠い地域の人にも広く知ってもらい、
商品のよさやイメージ、魅力を伝えることで売り上げに繋げる
ためのツールですよね。旅館もその例にもれません。

皆さんは、旅行計画を立てる段階で宿泊先が全く決まっていない
場合、どうやって実際に泊まる宿を探して決めますか?

はじめは「どっか温泉行きたいな~」くらいのざっくりした
動機からスタートするのが一般的かと思います。
そして、「米沢牛食べたい」「こんな体験ができる」
「近くで観光したい場所がある」「鄙びた旅館に泊まりたい」
と徐々に旅行先でしたいことを取捨選択しながら、目的地を
絞り込みつつ最終的に宿泊する宿を決める…という流れが
だいたいのパターンではないでしょうか。
もしもその目的エリアに、競合する旅館がたくさんひしめいて
いたとしたら…。あなたならどうしますか?

ここでよく利用されるのが、じゃらんや楽天みたいな
ポータルサイトです。好みの条件で手軽に宿を絞り込める上、
値段も口コミも一覧で見比べられるからホント便利なツールです。
あとはお客様自身の好みや予算etc.に全て委ねられるわけです。
が、つらつら見ているうちに、だんだんどの宿も似たり寄ったり
だなぁ(特にイメージ写真)…なんて思ったことありませんか。
プランの内容や特典や料金もそうなんですが、規格が同じ
ポータルサイトの中では、やっぱりどうしても宿を絞り切れない、
なんてこともあると思います。

…もし私だったら。
迷った末の最終判断材料として、直接各宿のHPに訪れます。
というか、旅行に行こうとするたびに毎回自社サイトに行ってます。
西屋のサイトのアクセス解析を辿ってみても、それと思しき経緯で
サイトを訪れた人が一定数いるのが分かります。

そう、ここが勝負どころなのよ。

だから私は、エッセー(旧コラム)から旅館らしい話題を徹底的に
避けたのです。特に意識して目指したのは、

1.とにかく旅館のイメージからほど遠いコンテンツにする 
2.旅館でなく自分をキャラ立ちさせる
(一般的な"旅館の女将"にありがちな貞淑な(?)イメージを
何故か片っ端からぶっ壊したかった) 
3.キャラ立ちするのだから、自分が思う事、好きなものを
のびのび自由に書いていこう 
4.観光情報を提供する有用な役割も担わせる(第一号の中身)
→しかし平たい文章にならないよう余所者目線を前面に出して、
地元の観光スポットやお店を紹介する(有名どころはちょっと
視点を変えて、マイナーなところもまんべんなく)
自分なりの表現を大切にしながら、いいところを褒める。

そして最終的な目標として、
「西屋に泊まりに行きたい=女将に会いに行きたい」に
繋がればいいなぁ…そんなことまで考えていました。

…ああ…思い出した…なんだよ…迷子だって言ってたけど、
ちゃんと考えていたじゃないか。
特に湯守に関するシリーズは、これまで何回も取り上げてきました。

ただ、湯守はバックヤードの(つまりはあまり美しくない)仕事です。
話題として取り上げるということは、ある意味宿の本性を晒すのと
おなじです。ぐちゃぐちゃのバックヤードの写真とか。
さすがに、最初は書いていいのかどうか迷いもしました。




湯守は元々、番頭不在の危機からあくまで「必要に迫られて」
引き受けたのが始まりでした。まさかそのままドツボにハマる
とは予想もしていませんでしたが…。
最初の頃は、ほぼ手探りで温泉管理するところからスタート
したたため、なかなかうまくいきませんでした。
何しろ唯一の師匠が、訛りがキツけりゃ話の内容もぶっ飛んでて
あまりにコミュニケーションに難ありのアノ倉ちゃんなもんで。

どんなに頑張っても「お風呂が熱くてダメ」だの、
「昔は暑くてよかったのに今はぬるくてダメ」だの散々
口コミで書かれては凹み、自然現象による不可抗力で水が
頻繁に止まる季節は、それこそ嵐だろうが吹雪だろうが
山だ桝だと駆け回り、四苦八苦しながら調整に明け暮れました。

それでも、お客様は当然そんな作業の様子を見ているわけでは
ないので、どれほど大変かなんて分かるわけありません。

ある冬のこと。大雪と吹雪が原因で起きた雪崩で堰堤の
取水口がいつものように塞がりました。温泉街全旅館全滅。
山道は腰まで埋まる積雪に視界不良の悪路。危険だが、
今からなら誰が行けるかと、他の旅館と必死に相談し合って
いた時のことでした。滞在中のお客様に、
「何やってんだ、いくら自然現象だからって客に風呂を
提供できないなんて怠慢だ!」と
面と向かって怒鳴られたことがありました。

私はとうとうぶちギレました。

温泉が出るのは当たり前、蛇口をひねれば水が出るのも
当たり前だろう、みたいな人間本位な傲慢さ。
自然の恵みと同時に齎される畏れの何たるかを、
まるで知らぬその物言い。

例え相手がお客様でも、一方的な物差しだけで、
温泉と人との何たるかを断じてほしくはありませんでした。

直接は言えない、でも私が、私達が守っているものが
何なのか、どうしても伝えたい。

最初の遠慮はどこへやら。
いつしか私の中で膨らんでいたそんな葛藤と感情の爆発すら、
包み隠さずこのエッセーに叩きつけていました。

湯守業は、温泉と終わることのない無言の対話を続ける
地味な仕事です。旅館の女将としてあるまじき言動も
あったかもしれませんが、その切なくも尊い役割と、
時代を超えて、人と自然が紡いでいく深遠な関係性に
私はこれ以上ない深い敬意と愛着を抱いていました。

この温泉に向き合いながら葛藤する日々が、
彼らの琴線に触れたのしれません。




↑「旅の手帖」3月号"p116より。

野添さんは旅の手帖の紹介記事の中で、
私のエッセーをこう表現してくださいました。
「よくある宿紹介ブログとは違って、型破りな若女将の日常が記されていた。
心のヒダをさらけ出す等身大の若女将像に親近感が涌いた。」

ああそうか。今までの話題が恥ずかしいとか何とか、
何を卑屈になっていたのだろう。ありのままでよかったんだ。
何もカッコつけなくったってよかったんだ。

それよりもこれからだ。

私は色々諦めかけていました。旅館も、もう長く続けられないんじゃないか
とか、数年後は違う場所にいるんじゃないかとか。でもそれは可能性の
一つであって、そうと決まったわけではない。諦めるのはまだ早い。
きっと私はまだ頑張り切れていない。
このまま途中で今の自分を諦めてしまったら、
後できっと後悔するだろう。ならば自分が信じて納得するところまで、
思いっきり走っていこうじゃないか!!
…そして前回の冒頭に戻ります。Start over again.

はい。
長々と読んでいただきありがとうございました(泣)


次回からは再び正常稼働に戻ります。
ご安心ください。
え?長たらしいのは勘弁して?えぇ…それは…(汗)
また、新たな目標が付きました。
このページ、いずれ何らかの形で書籍化します。
やり方はもちろん、どんな形になるのかも全然分かりませんが。
詳しい方にいろいろ相談してみます。
乞う…ご期待?!


今日の1曲 

やっといつもの〆にたどり着きました。
むしろ帰ってきた感(T_T)

今回は、最初に紹介した幼馴染の「えしぃ」ちゃんに
ぴったりの一曲です。

「光るとき」

羊文学(2022)


(↑公式ようつべサイトのPV。)

現在フジテレビ+Ultraで放映中のアニメ「平家物語」の
オープニング・テーマ。主人公の"びわ"は、青い右目に
未来を、左の茶色い目には死者を写す力を持つ
琵琶弾きの女の子です。原作にはいないオリジナルの
キャラクターですが、彼女の天真爛漫で時に感傷的な姿が、
なんとなく小学生の頃のえしぃちゃんに似ています。
なにより歌詞がステキ。

最終回のストーリーは初めから決まっていたとしても 
今だけはここにあるよ 君のまま光ってゆけよ


勇気と気づきをくれたえしいちゃん。ありがとう。
どうかこれからも友達でいて。
また凹みそうになったら、これ歌って頑張るから。

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