若女将コラム

日々西屋と山を駆け巡る湯守兼女将による、自由奔放すぎるコラム改めエッセーコーナーです。
人生は奇想天外に生き抜こう。趣味のことや日々思う事etc...ほぼ西屋に関係ない話題ばかり載せています。

音のある生活 44 「雅楽いいよ雅楽!」-②

 

毎年玄関の柱に飾る小正月のだんご飾り。



今年は雪が多すぎて、飾りつけをするための団子の木が
入手困難だった経緯から、枝のサイズもお飾りもだいぶ
控えめになりました。
外がほぼ完全にモノクロの銀世界なので妙に華やいで見えます。
春が来るまであと約3か月半…今年はいっとう待ち遠しい。。





さて、あまり間をおかずに後編まいります。
音のある生活シリーズ第44回後編、雅楽小話の続きです!!



独身の頃、地元の神社で正月や例祭の助勤巫女をしていたことが
ありました(我ながら職歴スーパーマーケット状態である…)。
管絃の他、催馬楽()っぽい地元の歌舞に親しむ機会が
たびたびありました。プロではなく地元有志の演奏でしたが、
緋袴に白衣を着込み、社殿の傍らで間近に聴いた雅楽の生演奏の
感動は今なお記憶に深く刻まれています。

地元の歌舞は、右手に刀、左手に五色の緒がついた神楽鈴を
持って男性が舞う剣舞でした。名前…失念(汗)。
細面で上背のある壮年の舞い手さんでした。まるで動く
絵巻のようだった…。一方当時の神主さんは地元の神社庁支部
でも重鎮の方で、神道について色々蘊蓄を伝授して下さった方
でした。ご高齢にも関わらず、とにかく雅楽イイよね!と
少年のようにキラキラした瞳で熱く語っていらしたのが
印象的でした。
あ、雅楽にハマったきっかけは彼だった。
今もお元気かなぁ…

催馬楽(さいばら)…
平安時代に体系化された歌物(うたいもの)。
朗詠(現在の詩吟のように独特な節回しで歌う歌)と並び、
当時上流貴族の間で流行っていたJ-POPのご先祖(?)。
庶民が娯楽の一環で歌っていたものを皇族・貴族の皆さんが
逆輸入したものもあるそうで、千年前に生きていた皆さんの
心象風景が色鮮やかに蘇ります。

実は、雅楽の世界で誕生した用語は、
意外なことに現代日本語のあちこちで現役だったりします。
今でこそ巷でなじみの薄くなってしまった雅楽だけど、その
文化はしっかりと日本人の心にしみわたっているのだ!!

というわけで、以下!
wikiその他から拾った雅楽生まれの単語で作文タイムアタック30分!
…はさすがにオーバーしましたが…即興で例文を書いてみました。
即興だからクオリティの低さは目をつぶってくれ。
思いついたお題は、今まさに臨書している
『書聖:王義之の蘭亭序制作秘話(??)』
王さん一人称「ワタシ」でお届けします。
捏造モリモリ、キャラ崩壊の嵐。

※文中のこの色の単語が雅楽用語です。

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…ワタシは頭を抱えていた。かつてない出来事に混乱していた。
手元には、昨夜綴ったばかりの「蘭亭序」。
一応、下書き(仮)である。


「蘭亭序(神龍半印本)」王義之(353(永和9)年)(部分)その1

書いていた時の記憶はかろうじて残っている。
うん。とにかく呂律が回らないくらい酔っぱらっていたのは
確かだ。友人がお土産にと持ってきてくれたつまみがあまりに
オツな味で、いつも以上に飲みまくってしまったのも覚えている。
そして、なぜかみんなして超絶興奮状態だった。
今思えばあのつまみ、死なない程度に妙な毒でも入っていたのかも()。
ともかく、飲み会が終わって部屋に戻った後、なぜかそのまま
興が乗りまくって筆を取って…
気が付いたらいつの間に書きあげちゃっていたやつが…コレ。

なるほど分からん。

なのにだ。…なんかやたらイイ感じなんすけど!!
自分で惚れちゃう!!
え?どうしてこうなった??
マジ相当酔ってたよねワタシ?
何なら書き終えた直後から記憶飛んでるし、途中手が滑って
うっかり間違えちゃった箇所そのままえいえいって塗りつぶし
ちゃってるし、ちょっと字間違えてそのまま上書きしちゃった
所もあるけどさ。なんてゆーか、素面の時じゃ醸せない絶妙な
塩梅というか、全体の出来が良すぎるのだ。


「蘭亭序(神龍半印本)」王義之(部分)…その2

おまけに文章の中身までイケてるし、とにかくいろんな意味で様になってる
んん…おかしい。
今まで自覚がなかっただけで、実は酔っぱらってると本領発揮しちゃうタチ?
いや、いやいや、それはない。
一応ワタシ官僚だし、飲み代出すのケチるため自称下戸(ウソ)で通してるし、
気ままに生きたいからって要職蹴って会稽に引っ込んだけど、
今更皆にだらしないのん兵衛だと思われたら嫌すぎる…。
そう思って一夜明けた今。改めて清書しようと試みたのだったが…。
これがどういうわけか、何度再挑戦しても上手い具合に書けない。
なんでやねん。
やっぱりワタシって酒の力でないと化けられない奴?
いやいやなにその化けるって。
やだ自分でツッコんじゃった。
ないわー!いろんな意味でないわー!!
…そんなこんなですっかり堂々巡りになり、
ワタシは部屋の中で頭を抱えたのだった。
…以下冒頭に戻る。
しばらくして、ふと冷静に思い返してみた。
この蘭亭序、別に誰かに書いてくれと頼まれたわけでも、
作品として完成させるみたいな打ち合わせがあったわけでもない。
多分たまたまその時何か神懸かりでも降りていただけなのだろう。
そう半ば開き直ったのだった。
…そして数日後。

「ねぇ、ちょっと見てほしい書ってか下書き(仮)があるんだけど。」
日頃ワタシの書を好きだと評価してくれている飲み友達の謝安を
自宅に呼んで、例の書を見せてみた。
余談だがこの謝安、飲み友の中では唯一の左ぎっちょである。
書道仲間から始まり、かれこれン十年の付き合い。
気の置けないつぅかぁの大親友。
しかしこの時ばかりは(あ…呼ぶんじゃなかった…)と激しく後悔した。
二日酔いで頭痛いのにまた野暮用かい…なんて眉間に深い皺を刻みつつ
頼みを聴いてくれた謝安だったけど、件の書を見るなり、目をひん剥いて
数秒沈黙してしまったのだ。
「…マジかオマエ」
まるで見ちゃいけないものを見てしまったかのような表情。
とりあえず落ち着きたかったのか、自慢のアゴヒゲを殊更ゆっくり
撫でつつ、謝安は徐にこっちを見た。
「なぁこれ、もう一回書けないか?」
「……」(…あー、やっぱそうくるのね…)
「ねぇ、これヤバいよ、下書きだろこれ?清書したらもっとスゴイのが
できるよ。ちょっと俺にもコツを教えてくれよ。どうやって書いたん」
「………」
まさか記憶にございません、なんて口が裂けても癒えない。
でも、こいつは本当にいい奴なんだ。敵には回したくない。
「あー、あー…実はどちゃくそ酒飲んで…書いた…?」
口が滑った瞬間、サッと顔が青くなったのが自分でも分かった。
…やばい。トチッた。つい本当のことを言っちまった!!!

お互いなんとなーく重い空気が流れる中、恐る恐る謝安の顔を見上げると、
案の定彼は呆れて二の句が継げないとばかりのジト目で押し黙っている。
「え…もしかして、こないだの飲みの後書いたんか?」
「…」
沈黙は肯定である。察してくれ。もうワタシ何も言えない。
「一応アンタの下戸が方便だって知ってたけどさ、本当は飲めるって
知ってたけどさ~!!まっさっか他の書も酒盛って書いてたクチ??」
「ちょ、ちょっと待って“酒盛って”って何よその人聞きの悪い表現!」
「オカマかよ!」
「いやそこツッコむところじゃないから!」

・・・何はともあれ。
今度からは筆をバッチリ閉まってから酒を飲むわ。
この瞬間ワタシはそう固く胸に誓ったのだった。
笑えない大失敗!!金輪際二の舞を舞うまい!!

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なっが(笑)
そして全世界の王義之ファンの皆さん、弄ってごめんなさい。
でもちゃんと実物(真筆ではなく唐代に臨書されたもの)載せたから!
いやツッコんでほしいのはここじゃなくて。

雅楽生まれの単語、いっぱいあるでしょ?
普段使う言葉ばっかりでしょ?
ちょっとしたトリビアでしょ?
(他にもあるかもしれませんが、私の文章力ではここまでが限界でした…)


前編後編にわたってお届けしました雅楽シリーズ、
いかがでしたか。
何かをきっかけに、皆さんも雅楽を好きになってくれたら嬉しいな♪




今日の一枚

「陰陽師」

伶楽舎(2000)

↑ようつべで「盤沙調調子」を視聴!
笙の音色が神秘的です。

夢枕獏原作、岡野玲子漫画による「陰陽師」に
インスパイアされたコラボアルバム。
演奏はご存じ伶楽舎です。
管絃や舞楽の他、廃絶していた催馬楽を復活させたもの、
女性が歌う珍しい朗詠などなど、教科書的なアルバムとは
一線を画す面白い構成になっています。
しかも所々効果音やエフェクト入り。琵琶2台の弾き合わせが
楽しめる楊眞藻(ようしんそう)という曲では水の流れる音が、
陵王乱序では激しい落雷の音が(音量注意)、青海波では
突然の笑い声にズゥウウウンン…みたいな唸り音が響いてきたり
(こっちも音量注意)と、自然現象や人知を超えた魑魅魍魎の
幽玄な世界が見事に織り成されています。

また作中では、安倍晴明の親友であり、芸事に非常に長けた
源博雅(ひろまさ)というキャラが登場します。
安倍晴明のお祓い行脚に半ば強制的に(?)付き合いつつ、
作中モブ()と楽器を競演したり、朱雀門で龍笛を奏でてその
腕前に惚れ込んだ鬼から笛をもらったりと、恋愛は超が付く
鈍感だけど粋な立ち回りをする「中身が」イケメンタイプの
お方(実在の人物です)。

そんな彼が作中奏でる曲が、アルバムでの壱越調菅掻
(いちこつちょうのすががき)だったり蘇合香(そこう)の
イントロだったりするわけです。
ちゃんと感情移入しやすいつくりになっているのが何とも良い。

しかもこのアルバムは2枚構成で、2枚目はなんと、
ブライアン・イーノによるアンビエントパートになっています。
1枚目が清明と博雅の雅な世界なら、
2枚目は白比丘尼もとい蘆屋道満のテーマ。
"Connecting Heaven To Earth"という曲では、
録音中にたまたま喫茶店で出会ったという一般女性の声を
これでもかとエフェクト加工しています。
出会いもすごいけど、仕上がりもなかなかスゴイ。
アンビエントだけに聴く人を選びますが、
とにかく聴いていて飽きないアルバムです。

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