若女将コラム

日々西屋と山を駆け巡る湯守兼女将による、自由奔放すぎるコラム改めエッセーコーナーです。
人生は奇想天外に生き抜こう。趣味のことや日々思う事etc...ほぼ西屋に関係ない話題ばかり載せています。

湯桝と水路の工事のこと 2


たまに下山した時のささやかな楽しみ。 


セブンイレ文のキリマンジャロブレンドがうんまいです。
本命は素タバですが、どうしても寄れない時(が最近多い)はいつもこれ。
キリっとした苦みとコク味がたまらない。ブラックコーヒー一筋365日。



さてさて、なんだかんだで予定通り無事終了した湯桝改修工事です。



はい、ピッカピッカ!…に見えなくてもピカピカなんだ感じてくれ!!

湯桝は生まれ変わったのでこっちは当分の間大丈夫。
間違って蹴りを入れてもまず壊れないでしょう。まぁ絶対蹴らないけど。

…ただ、ただね、実は私、心配していたことがありました。




こいつ↑ 桝の後ろの貯水タンクことアシゾー君の方。

細いバルブ一本で、本当に58度の源泉を適温に調整できるだけの水量が
賄いきれるだろうかという漠然とした心配。
そもそも安定した水量を確保し、低い位置にあった水受けの場所を変える
ために今回アシゾー君が投入されたわけですが、アシゾーの場所も
出来上がった配管ルートも、実際は私の想像とだいぶ違っていました。




あまりにも密閉された、臨機応変できないガチガチの固定水路で。

もちろん計画の段階で湯守なりの視点から色々希望や意見は伝えましたし、
それが理解されたと思っていたし、出来上がったものに対して
施工依頼主側が今更こんなこと言っちゃいけないのは十~分わかって
いるんですが…。
ちょっと私の中では「こんなはずじゃなかった」感が拭えなかった。
本当に今更。
自分の名乗る「湯守」というスタンスが、いかに微妙で言語化しづらい
世界だったのかをこの時ほど思い知ったことはありませんでした。





左、バルブ。右下、ノジリ君(のバルブ)。

施工段階でノジリ君だけでも旧体制のまま残してもらったのは正解でした。

誰だノジリ君て?

このコラムでは「オマエ友達か?」くらい何度も軽いノリで紹介しています。
ていうか私にとっては友達みたいなもんだ。



↑過去コラムに載せた画像より。懐かしの旧桝にて。
①は三十三観音オーバフロー、
②はノジリ君より使用歴長いのに使い勝手悪くてノジリ2号。
因みに②は今春の裏山土砂崩れでほぼ使用不可に(爆)

かつて土砂で貯水槽が盛大に詰まった時、苦肉の策で
湯桝の脇の急斜面を流れ落ちる沢の途中に括りつけてもらった
援護射撃ホースがノジリ君(設置してくれたベテラン職人さん
の名がまんま野尻さんだったのがネーミングの由来。ベタ!)。

まさかそのまま5年も召喚しっぱなしになると思わなかったよ
万年ピンチヒッター!このノジリ君実は非常に優秀で、
桝のすぐそばで自在に水量の調整ができる上、
山の水が何らかの原因で減少したときの補助要員になり、
雪解けや紅葉の季節など、三十三観音ルートがほぼ機能しなくなる
時期はノジリ君が冗談抜きで唯一の生命線になってくれるのだ。



写真↑は落葉ピーク時の様子。桝のふちに先端を乗せて、桝に入る
水量を(かなり強引に)調整していました。自然落差の
水圧をナメるな。台風の後で沢が増水した時だったのでかなり
えげつない出方をしちゃってますが、同時に後ろのオーバーフローが
落ち葉で詰まってほぼ用をなしていないのが見て取れます。

正直ノジリ君がいなけりゃ春と秋は乗り切れません。
口径が6㎝とそこそこでかいので詰まりにくいのが心強い。
大雨の時は透明な水でなくほうじ茶(?)やらカフェオレ(!?)やら
運んできてくれたりもしますが(しかも無料サービスときた(笑)!)、
湯守だって24時間お風呂に張り付ていられるわけじゃありません。
細けぇことはこの際不問に処す。
そんな奴です。
改めてお見知りおきを。

アシゾーが来る前の西屋のお風呂調整は、
このノジリ君と三十三観音フローの2つを使い分けて行っていました。
基本的には後者の豊富な水を駆使していたわけですが、




例えばひどい日照りの時は裏山のどこぞで拾ってきた極限野尻NA
(直径15㎝のゴン太塩ビ管…元ネタはFF7)を大胆にもそのまま突き刺し、
はたまた大雨で水が濁って単発コントロールが不可能そうなときは、
近年新調したばかりの直管補助ホース:太(直径6㎝)・中(4㎝)・
細型(3㎝)の『銀魂』トリオ
(ノリで太いのから順に銀さん、新八、神楽と名付けていました!)
を使い分け、その辺に落ちていたホースに至るまで諸々自由自在に繋いで
おろぬいて、千変万化の気候変動に対応してきました。

ていうか写真がない…新八と神楽見えにくいけど最前線にいたんだよ…



これらは全て、水がめに溢れるほどの豊かな水量が届いていたからこそ
できた芸当でした。
しかし今は…



その豊富な三十三オーバーフローの出口が、湯桝より低い&射程距離が
短か過ぎて全く調整に使えない残念なインファイターになってしまった。
心なしか先端がうなだれているようにも見える…

ただのホースをどこまで擬人化するつもりなんだ私は(笑)

これを再び活用するとしたら、アシゾー君のオーバーフローを湯桝以上の
高さくらいの鼻っ先で思いきりぶった切るか、何らかの方法で単騎バルブと
役割を交代して温泉への供給量を増やすしかない。
まぁぶった切るくらいなら私でもできそうだ。電動のこぎりで。
ついでに同じ口径の配管をゲットして湯桝のいい場所まで水を引くとか。
いいね。やってもいいかな?あー、でもダメだよねそうだよね。
いくら私でも、新設したての配管を勝手に切り刻むなんてそんな真似でき…
気が触れたらやるかも…まぁ社長が真っ青になるからやらないけど。

実際アシゾー導入後10日も経たないうちに梅雨明けの日照りが山の水源を
直撃し、激減した水量を十分に湯桝に落とせずあっという間にお風呂の
温度が熱くなるという発狂したくなる状態が発生しました。

ほれ見ろ予想が当たっちゃったではないかー!!

やっぱりバルブ単騎じゃ歯が立たなかった…
ノジリ君もこの時はさすがに水量不足で沈黙していたし。

仕方がなくて、急場しのぎでアシゾーの上蓋をこじあけて半ば無理やり
ホースを通し、サイホン式で場外垂れ流しだったオーバーフローの水を
一部湯桝にバックしていました。



見た目はひどいが仕方なし。
しばらくそうして口から「エクトプラズム」を吐き出しておけアシゾー。
そう呟いて、私は無情にも放置プレーを敢行したのだった。台風来るまで。

この時はそれでも温度調整が追い付かなかったので、ついでに湯桝の底にある
源泉バルブを開けて相対的に湯量を落とすという苦肉の策で、どうにか
こうにか温度を保っている状態でした。アシゾーがさすがに不憫だった。

しかし何よりも解せぬのは、この工事の前後なぜか野尻NAと新八が
行方不明になり、(私の見間違いでなければ)銀さんはいつの間にやら
切り刻まれてアシゾーの一部に吸収合併されているし、
神楽だけがぽつねんと奥の石垣に取り残されていたこと。



↑神楽と元からあった補助ホース、これしかもう手元に残っていません。

ホラーすぎる。
ブレアウィッチプロジェクトすぎる。

私はっ、我慢しているのにっ。
転がってたホースは切るんかい職人さぁあああんw!!!




ちょっとぬるすぎる、ノジリ君を細くして水量を確認する、



いきなり熱くなりおった。バルブを開く、



ノジリ君付近には上がり湯に通じるホースがあるので
暴発厳禁(いつか場所変えよう)。両方微調整。水の総量を変えず
温度をさらに微調整…(?!?)

※ノジリ君とバルブでは水の落ちる俯角も場所もまるっきり違うので、
一緒くたには扱えません。湯滝にもたらす効果スピードが違います。
即効性があるのはノジリ君、後からじわじわ来るのがバルブってとこか。
口径は同じだけど別物だと思った方がいいかもしれない。
使い方次第ね(独り言ですぶつぶつ…)。




そして時間をおいて再び温度測る…

なるほど分からん。
今まではずっと勘とフィーリング9割、視覚情報1割で作業していましたが、
今後活かせる経験があるとすれば気温と水圧・水温くらいかなぁ…
新しい湯桝には、以前と違い温度に差をつける仕切りがありません。
水と温泉がそれぞれ流れながら桝全体で複雑に攪拌していく過程を把握
せにゃいかん。
水を落とす場所は動かせないから、つまりアシゾーたちとは
ひたすらロジカルに付き合わなきゃいけないわけです。
え?エントロピー?散逸構造?うぉおおあ超ニガテ。
今のところ自覚レベル3くらい。弱~…。



とはいえだ、
私は湯守ですから。
ここのお風呂はれっきとした温泉で、水も無濾過の山の水そのままだから。
少しでも人の手が入った水道水なんぞに頼らずとも常に適温で、気持ちよく、
できれば長くゆっくり入っていただきたいといつも願っています。
例えば水が足りないからって、本来有難い恵みであるはずの温泉を直前で
みすみす廃棄するなんて言語道断なのだ。
しかし先週はそれをやらざるを得なかった。悔しかった。
何に対して?そうせざるを得ない無力な自分に対して。

ここ数日まとまった雨が降ってくれたおかげで水量は何とか持ち直し
ましたが、8月以降当分天気予報は晴れマーク。
水が少なくなる現象は分かっていても脅威です。
やっぱりあのうらぶれたインファイターを無理やり再稼働させるか?
エクトプラズム抽出ホースを増やすか?
まだ今の桝と付き合い始めて半月弱。
ブラックコーヒーで苦みと癒しを味わいつつ、暗中模索の日々は続く。


今日の一曲 

"Mike Oldfield's Single (Theme From "Tubular Bells") "

Mike Oldfield (1973) 


(↑Youtubeのマイク公式ページにジャーンプ。)

イギリスのミュージシャン、マイク・オールドフィールドの
1stアルバム。リリースからもうじき半世紀!!!!
ジャンルはプログレッシブ・ロックにカテゴライズされている模様。
このチューブラベルのアルバムでは、映画「エクソシスト」の
主題歌になったパート1の冒頭が超有名。ですが、
私が一番好きな曲はこの哀愁漂う3曲目です。パート2のモチーフを
ノスタルジックに凝縮したような3分ほどの曲ですが、冒頭の
イングリッシュホルンの主旋律がいい。遠い過去の懐に帰るというか、
寂しいけど今は頑張るぞ、という気持ちになれるというか、
とにかくちょっとほろ苦い感覚にキューンとします。

湯守作業で、ある時は冬の嵐の中、またある時は秋霜に濡れた
紅葉を踏みしめつつ、一人水確保を求めて三十三観音を目指すとき、
なぜかこの曲が脳内再生されることがあります。
おかげで個人的に「湯守のテーマ」の一つにもなっていたりする、
理由はよく分からんけど「そういうもんなんだ」と自分で
納得できちゃう1曲です。
何だろうね?この気持ち。
モチーフがエンドレスなのがまさになんとも。

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