若女将コラム

日々西屋と山を駆け巡る湯守兼女将による、自由奔放すぎるコラム改めエッセーコーナーです。
人生は奇想天外に生き抜こう。趣味のことや日々思う事etc...ほぼ100%西屋に関係ない話題を思いつくまま載せています。

衣替えは三次会の1か月半後だった ー『春の祭典』前編




白布の冬を生き抜き、間もなく同居1年のメーチャンズ(メダカ)。

譲り受けた当初は稚魚が1匹いましたが、いつのまにか大きくなり、
今ではどの子か見分けがつきません。
給餌は1日1~2回。人の姿を見かけると、
「…餌か?餌だな!おい仲間共、餌タイムだぞ!!」とまるで互いに
呼びかけ合うように一斉に縁に寄ってきます。
なんだ此奴ら…愛い。こんなミニマムな世界にすら食欲のパブロフが。
ちっちゃくても脳みそちゃんとあるのね(全世界のメダカに謝れ(笑))。
一方タニシは放っておくと無限に増殖して景観上よろしくないので、
2~3回躊躇なく間引きました。実に無慈悲。



さぁ、前回さんざん半裸だのリビドーだの"欲求"に正直だの、
旅館HPコンテンツにあるまじき単語を相変わらずかまととぶって
盛大に撒き散らしましたが、それもこれも、すべては今日のため。

シリーズ化しておきながら「衣替え」のこの字なんぞ自らの手で
木っ端微塵です(でも今回も同じ単語を無理やり入れた)。
「春の祭典」回この度で〆です!長いので前編後編で!!

『春の祭典』~La Sacre du Printemps~前編




↑初演時の様子。当時の音楽雑誌に掲載されていた写真のようです。
バレリーナたちの表情が揃ってこわ可愛い。ウィキペディアより引用。

20世紀を代表する作曲家の一人、イーゴル・ストラヴィンスキーが
作曲したバレエ三部作の一つ。1913年初演。
バレエ曲ですから、メインはバレエです。はいはい禅問答。

初演会場は、今も昔も世界のファッションの最先端を切り開く、
フランスはパリにあるシャンゼリゼ劇場でした。バレエに詳しくなくとも
相当名誉な待遇だったであろうことは容易に想像できます。
しかしこの演目の中身は最先端どころか、オシャレに抜かりない高貴な
貴婦人方&リッチな劇場でコンサート鑑賞というハイソな趣味からして
相当意識高い系の紳士方のはるか遥か斜め上をいく、奇想天外の謎エンド
ストーリーだったのでした。一言でいうと
「異教の神を崇める古代の人々(主に長老達)および生贄の乙女による
禍々しい宗教儀式」

「火の鳥」のような王道ハッピーエンドでもなければ、
「ペトルーシュカ」のように、不気味さを醸しつつも実ることのなかった
悲恋ものという感情移入しやすい物語でもない、設定も振り付けも狂乱の舞台。
そりゃもう初演会場は大荒れ。現代のSNSでいう「大炎上」を巻き起こしました。
バレエダンサー達や演奏者が途中で上演を中断せざるを得なくなるほどの、
かたや観客席では客同士の流血沙汰が勃発するほどの。
これ、実は結構オケ史上有名なエピソードです。

餌に湧きたつメダカが如く。いいぞもっとやれ(笑)。

ちなみに私、この曲を初めて聴いたのは大学1年生、自覚ゼロのままオケ入団
→早々沼につんのめって頭から引っ張り込まれつつあった頃でした。

20世紀以降の管弦楽曲は、価値観の多様化が織りなす人々の機微の代弁なのか、
はたまた心病む混沌の時代を言外に憂う作曲家の無意識の叫びなのか、
難解な旋律やリズムを刻む不穏な作品が目立つようになり(全部ではないが)
それらを聴くのはともかく、演奏するとなるとなかなか一筋縄ではいきません。
例えるなら、ただでさえ出番が少ない(ことが多い)&リズム楽器なのに

主旋律が読めなくて入りタイミングが大概突拍子もない打楽器陣は、
四六時中手に汗握りながらホラゲーでもプレイしている気分…ん?

そこで、演奏会の課題曲のスコア(全パートの音符が書かれたオケっ子
御用達の楽譜)はもとより、作曲に至る人・歴史の背景にも一通り目を通し
(CDのライナーノーツや伝記的な本etc)、作曲者の作風や同年代の他の
作品のさわりに至るまで広く浅く前知識としてあらかじめ頭に落とし込んで、
より演奏曲を深く解釈しておくというのが我がサークル(というより私が
所属していた打楽器part)の掟でした。
これが、シリーズ冒頭に登場したかのK先輩の与えたもうた愛のスパルタです。

オケの右も左も知らなかった私に、今まで触れたことがなかった打楽器の奏法
はじめ、ありとあらゆる知識を根気強く猛攻で叩きこんでくれたK先輩。
芸術学部文芸科に所属し、若くして人生酸いも辛いも噛み分ける器用で奇抜な
オケ&映画マニアでした(褒めてます褒めてます)。
つまり、彼が説く広く深い前知識の延長線には、必ずと言っていいほど
いっそ知らなかったほうがいいくても困らない爆弾も時々仕込まれていた
わけです(褒めてます?)。

「春の祭典」は前衛的なバレエ曲であり、鬼気迫る展開に終始飲まれるまま、
踊り狂った生贄の乙女が遂に昇天するラストシーンでは、ひたすら恍惚と恐怖の
爆発(乙女というか演奏者が)…に圧倒され、気が付けばブラボー!と
心の中で拍手喝采してしまう衝撃の約30分。

これがおおよそ、ライナーノーツ止まりで曲を聴いた時の月並みな感情でしょう
(活字化するとややこしくなる)。

実は春の祭典は、先輩も私も現役の間一度として定期演奏会の曲目に
ラインナップされたことがない曲でした。
つまりそれほど聴きこんでおかなければいけない課題ではなかったのです。
理由は単純。実際に演奏するのが難しすぎるから。

にもかかわらず、K先輩は何を血迷ったのか初っ端からハイでディープな
”ハルサイの洗脳”をけしかけてきましてねぇ。
なり手がいなかった打楽器partから他楽器へ浮気するなんて万が一にも
許さないぞと言外に凄みつつ、往年の大先輩が過去定期演奏会で見事披露した
春の祭典の本番模様を、何の前触れもなくCDで流しはじめたのでした。
割と大音響で。

…時は新歓n回目→指揮者の先生宅でなだれ込み三次会の真っ最中。

(続)

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