閑話休題 ~秘湯の会女将研修会にて②
こんにちは。
「アナと雪の女王」も「君の名は。」も未だにチラ観しかしていない若女将です。
この間再び雪おろしに参加し、茅葺屋根に上がりました。
(だから更新が遅れました!…と、しょうもない言い訳をしてみる。)
現代の屋根と違い、足元は中途半端にふかふかで妙な感覚。
西屋の場合、玄関階段側にだけ落雪防止の細木を2本横に渡していますが、
例のアンカーはついていません!
代わりに数か所カラビナが打ちこんであり、そこに命綱をかけて作業します。
超がつく急傾斜の突端から温泉街を見下ろすのは実に壮観ですつまり怖い。
山タイタニック(笑)
ともあれ、例年よりは雪が少なくて実はホッとしている今日この頃でした。
※
さて、前回に引き続き秘湯の会の研修会からの話題です。
今回の研修会では、先輩宿の貴重な講話がありました。
そのうちのひとつ、大分県にある寒の地獄温泉の三代目:武石さんは、
福井県からはるばる宿に嫁いで42年の先輩女将さんです。
源泉は14度(単純硫黄泉)の冷泉ながら噴出量が多く、
夏は水着でin!一方室内には50度のボイラー室があり、
そこに温泉成分を付けたまま入って湯治する、というのが入浴の
スタイルだそうです。
その珍しさから遠方から見えるリピーターさんも多いのだとか。
小さな島国とはいえ、全国津々浦々なんと個性的な温泉もあるものよと
感心するばかりです。
さて、武石さん。半世紀近い旅館生活で、秘湯の会への入会、
大々的なリニューアル、跡継ぎである息子さんとのこと、
家族との時間…さまざまな人生ドラマが展開する中、数ある宿から
お客様に自分の宿を選んでもらって泊って頂くということは、
何か縁があるのではと考えるようになったそうです。
「どうしても思いが通じ合わないタイプ、事情を抱えた方など
いろんなお客さんが訪れるけれど、その一人一人に家族がいて、
よく考えたら同じ人なんだ」と。
そんなお客様に対して、同情ではなく「情け」で寄り添うべきなのだろうと
気付いたと仰っていました。
武石さん「人生は山あり谷あり、そして旅館を営むことで“海”もある」。
お客様との一期一会は私も日々経験させてもらっていますので、
伝えんとする思いが実に身にしみて伝わってきます。
そして温泉との“一期一会”も。
私は湯守もしているのでどうしても温泉寄りの話に行ってしまうのですが、
日々温泉に触れながらよく考えることがあります。
一見同じに見える湯滝風呂。
でも、昨日の温泉と今日の温泉は全く違います。
昨日入ったお風呂の温泉は、今頃日本海へ向けて最上川を下っているかも
しれない。あるいは蒸発して空へ登っていったかもしれない。
あくまで私見ですが、湯守とは、そんな自然と人との一期一会を繋ぐ
橋渡し役のようなものだと思うのです。(続く)
※
相変わらず突然やってくる今日の一枚コーナー(笑)
Peter Broderick "Two Balloons"(2018)
(↑画像をクリックすると、アルバムのPart 4が試聴できます。
嵐のシーン(?)。)
寒の地獄温泉の武石さんのお話をイメージして選んだのはこちら。
アメリカのミュージシャン:ピーター・ブロデリックが去年リリースした
コンセプトアルバム。
タイトルの通り、気球に乗って夢の中を旅するような小作品で、
少しずつフレーズを変えながら美しい景色(多分夜かな?)が流れてゆく~
そのうち目の前に突然の嵐!舵がきかなくなり、雷雨の中、トラブルで
気球がしぼんであわや地面にまっさかさまの大ピンチ…!と思いきや、
実は夢落ちだった~
目覚めたのは夜行電車の中…まだぼんやりと夢心地…
みたいなストーリーが目に浮かぶような、
まさに「人生山あり谷あり海あり」といった感じの面白いアルバムです。
ただ最後の”Techno for Lemurs”は直訳すると「キツネザルの為のテクノ」…
イマイチ意味がよく分からない(笑)
コミカルでノリが良い曲調がキツネザルっぽい?
人生の例えば川だったり地形だったりいろいろですが、
人の数だけ人生があって、その複雑な交差の中から新しい友情や絆、家族や愛情が
生れると考えると、生きているだけで奇跡だと思えてきます。