閑話休題 ~秘湯の会女将研修会にて
こんにちは。
行く気満々だったはずのフェルメール展(もうすぐ終了)をなぜかすっ飛ばし、
隣の隣の国立科学博物館の地下で霧箱をかぶりつくように覗き込みながら
「(宇宙線が)見える…見えるぞぉ!」
…と、どっかの眼鏡大佐みたいに一人狂喜していた若女将です(笑)
というわけで、今週29-30日にかけて、私は秘湯の会の女将研修会参加の為
約1年ぶりに東京に行っておりました。懐かしい場所をいくつも訪ね、
遠来の同士の方とお会いし、それはそれは充実した2日間でした。
カテゴリは「閑話休題」「湯守のこと」ですが、2回にわたって、
その時の話題と所感をお伝えしていこうと思います。
※
秘湯の会の女将研修会は毎年この時期に開催されます。
四十年を超える秘湯の会の歴史において西屋はまだ新参の立場なので
(会員番号MAX197軒中西屋は189番目…現在秘湯の会会員宿は170軒未満しか
ありませんが、最初に与えられた宿番号自体はそのまま残ります)
私も今年で参加2回目だったわけですが、その内容は驚くほど充実!!
先輩の秘湯の宿の女将さんからも沢山の貴重なお話を聞くことができる
貴重な社交場だったりします。
研修会では、発足当時から秘湯の会を長く牽引してこられた佐藤好億名誉会長さんの
講話が設けられています。
今回テーマは(テーマ自体は設定されていなかったが私が勝手に総括)
「21世紀の今改めて問う、“情け”とは何なのか、“秘湯”とはどうあるべきなのか」。
因みに去年は「秘湯の宿を守ることは、温泉文化そして地域文化を守ること」。
うーむ…深い。
佐藤さんほど知識豊富で数多くの秘湯の宿を知り尽くし、
ご自身もまた旅館の経営者として時代の変遷を目の当たりにされてきた方も、
当たり前のようなこの命題に対して日々自問自答しているのだと
改めて気付かされました。
一方で他の宿の先輩女将さん方との談話から、経営難、人材不足、
後継者の不在などなど…他人事とは思えない様々な問題を抱えている
現状が浮かんできました。
全国各地、それも僻地にある秘湯の宿は、東京のような華々しい都会とは
およそ無縁の場所で、横の繋がりを保ちつつ、それぞれ守るべきものの為に
細々と商売を続けているわけです。
翻って私が守っているものとは?
一番に思い浮かべるのは温泉です。
古くなった建物の保存も勿論ですが、この土地に温泉が湧いていて、
それをお客様にきちんと提供できる状態になければそもそも
温泉旅館業は成り立ちません。それこそ当たり前の話ですが。
しかし当たり前だからこそ、その恩恵に対する感謝、自らの立ち位置を
常々意識しておかなければいけないとも考えているのです。
今思えば、湯守になったのもそういう事由からでした。(続く)
※
堅苦しくなりがちな文脈に唐突に投げ込む(爆)今日の1枚。
ELLA FITZGERALD & BILLIE HOLIDAY "AT NEWPORT"(1958)
(適当なリンクが…ない!)
20世紀の女性ジャズ・ボーカリストの頂点に立つエラとビリー、
そしてカーメン・マクレエ(日本では彼女達3人を合わせて
女性ジャズシンガー御三家と呼んでいるそうですが、
カーメンはどうもエラやビリーほど有名ではなかったようです)
この3人の貴重なライブを録音&編集したものがこちらのアルバム。
エラが太陽ならビリーは月、カーメンは星…みたいな印象かな。
エラはとても伸びやかで声が明るく、ジャズシングにふさわしい
優雅な歌い方をします。
一方のビリーは名曲「奇妙な果実」や彼女本人の波乱の生涯
(酒と薬にまみれ44歳の若さで亡くなってしまった)に象徴されるように、
どこか退廃的でコケティッシュ。
カーメンはどちらとも違い、ジャズを超えてポップ曲のカバーも
こなしたりしているので、掴みどころのない魅力的な歌い方が特徴です。
個人的に(古典的なものに限らずEMC含めて)ジャズは物憂げに
まったりしたい時間に聴きたいジャンルなので、
誰が好き?と聞かれたらビリーと答えるわけです
(つまりこれが前回のコラム冒頭の伏線)。
どの曲も、その場で聴いているような臨場感があっていい感じですよ。