若女将コラム

日々西屋と山を縦横無尽に駆け巡る湯守兼若女将のかなりマイペースなコラムです。
内容はすっ飛んでいます(というかほぼ西屋に関係ない話題ばかり)。ぜひ楽しんで下さいませ。

音のある生活 39 「新緑のAndante」




こんにちは。

伍番街のマ…七番街の若女将です。
23年ぶりにピザも蜜蜂も大きくなって帰ってきました(何を言ってるn(略))。

久しぶりの更新です。
書きたいことは沢山あったものの、休業中はさすがにはばかられました。

そもそも休業要請が出る前から、消費税UPやら暖冬やらと暗雲が垂れ込めていた
昨今の観光業界。そして最後にやってきたのが、思いがけない
毎日が日曜日(まるでいい意味ではないが…)」の1か月という…。

我々観光業の人間がGWまるっきりお休みなんて前代未聞です。
泣いても笑ってもどうにもならないので、ステイホーム中は子供達と一緒に
「今までできなかったことをしよう」をマイスローガンに掲げ、
(その本当の理由は下記にて。)
ささやかな仕事の傍ら



レンバス作ったり(「指輪物語」に出てきたエルフの携帯食(らしきもの?))



カレーパン作ったりしていました(しずくちゃんの絵本を参考に)。

特に、着物のメンテナンス(季節の入れ替え&襦袢作り&作り帯作り)
があれこれできたのは個人的に嬉しかったな。
ただいじるだけでなく、前よりさらに日常着らしくしようと着方を
工夫しながら何度か練習もしていました。その結果、見事「補正ゼロ」
「帯板不要」「衿芯ナシ」「着物の堅苦しさ完全無視」をクリア(?!)。
不定期ながら着物生活も復活させることができました。
着物は、母譲りの大事なアイデンティティ。
末永く自分らしさを保ち、お客様が求める鄙びた宿のイメージを大事に
守りたいと考えた時、やっぱり着物はマストアイテムだと再認識した次第です。
だいたい持っている着物の数があまりに多すぎて洗い(虫干しし)きれない…。
いっそ着ながら空気を入れてやろうという狙いもありますです。

他にも、
運動不足解消のため東屋さん中屋さんの子供達も一緒に白布大滝に行ったり



遊歩道を散策したりしました。



↑遊歩道の途中にある展望台からは飯豊連峰がくっきり!

春休みと重なる時期だったとはいえ、2か月半以上友達と一切会えない
休校期間はさぞストレスだったと思います。そんな子供達にとって、
雄大な自然に囲まれた白布界隈のミニ探検はたのしい遠足気分だったろう。





↑雪の重みで根本が斜面に沿って曲がった森の木々。遊歩道にて撮影。
ね、本当に「ロード・オブ・ザ・リング」の一場面みたいでしょ?

こんな感じで、休業中まともに山を下りたのは片手で数えられる回数程度。
不便だけど、こういうとき山に住んでいてよかったと改めて思うのでした。



(5月3日撮影。)

気が付けばすっかり日が長くなり、あたりは新緑に包まれています。

昼はエゾハルゼミが、夜はトラツグミ(鵺鳥)が、森の奥から
その不思議な鳴き声を聞かせるようになってきました。



霧の朝、晴れ時々通り雨、そして満天の夜空…
音もなく、流れるようにその位置を変えていく星々。
人間世界の混乱をよそに、自然はありのままに時を刻んでいます。

白布にずっといると、人という単位の小ささも相まって
本当に時間の経つのを忘れそう。先日のとある取材の折に
「見慣れた景色なのに違う世界にいるみたいだ」と話しましたが、
休業が明けた今でも時々、ふっとそんな気分になるときがあります。

コロナによって、我らを取り巻く環境は一変しました。


(人ひとり通らない白布温泉街。5月3日撮影。)

新型コロナウイルス…どこぞから降ってわいてきたミクロの物体
(ウィルスはその構造上非生物と言われている)。
目に見えないこいつのせいで世界各地の人々の命が奪われ、
とてつもない大勢の人々の仕事が奪われ、結果経済は急速に悪化し、
社会全体の価値観から人の動き方そのものまで変わってしまいました。
コロナの感染力を侮ってはいけないのはもちろんですが、個人的には、
今回のコロナ禍はインフォデミックこそが諸悪の根源と考えています。
人間に突如襲い掛かった"未知への恐怖"に対して、すっかり便利になった
ネット社会が仇となり、正しい呼びかけから根拠のないデマから
果ては混乱に便乗した扇動に至るまで、無秩序な嵐が防波堤のない岸辺に
押し寄せるがごとく、毎日テレビもラジオもネットもどこもかしこも
コロナ一色。いいニュースなんてどこにもなく、夢や希望がなくなる
わけです。それどころか、判断力や自主性まで奪われるあまり
とうとう自粛警察なんていう妙な副産物まで出てくる始末。
なにが警察だ。

プレジデント神羅「正義の執行者気取りはさぞ楽しかろう。」
↑若山弦蔵さんの渋い声でこのセリフは威力抜群でした。

旅館業や飲食業は、まだコロナがそれほど国内に蔓延していなかった
2月からインバウンドを中心に猛攻直撃を食らっていました。
相変わらずこのコラムでは余裕ぶっかましたようなことを書いていますが、
決して中身は余裕じゃありません。仲間の旅館の多くも共に営業を再開
しましたが、以前の客足が戻るまでにはまだまだ長い道程が覚悟されます。
正直、私達もどこまで耐えられるか分からない。
でも、旅館業は本来訪れるお客様に癒しと安らぎを提供するのが仕事です。
その私達が不安や悲観に打ち負けてオドオドしていたら、
お客様を温かくお迎えすることなんてできません。
だから休業中も前向きな気持ちを決して無くさないように、
子供達や家族から笑顔が消えないように、自分から積極的に自転して
「今やりたいこと」「今しかできないこと」を思い切り楽むぞ!
と言い聞かせていました。
だいたいこんなチャンスはきっとこの先当分ないだろうから、
いろんな意味で後から後悔することがないように、
そして同時に、いつか訪れるであろう明るい未来をひたすら信じて、
この約ひと月を過ごしてきました。

いよいよ休業要請や緊急事態宣言が徐々に解かれ、今までとは違う注意を
十分に払いつつも、少しずつ元の生活ペースに戻ろうと、みんな必死です。
願わくば、しぼんだ風船をもう一度膨らませるように、再び世の中すべてが
心を温かく広げ、安心して暮らせる日々が戻ってきますように。





というわけで、西屋も14日からなんとか営業を再開することができました。
訪れるお客様にとって、温泉の癒しが今も昔も不変であることを信じ、
これからも頑張っていきたいと思います。



はな「あたいにも会いに来てカモ~ン★




今日の一枚

BRAHMS/Symphonie No.1

ベルリン・フィルハーモニー/クラウディオ・アバド(1990)


(↑サムネイルクリックで、Youtubeでのアバド版アルバムが
視聴できます。14:17頃から2楽章。)

ヨハネス・ブラームスが生涯に作曲した4つの交響曲の中でも特に
人気が高いといわれている、ブラームス渾身の大作です。
同国の大先輩ベートーベンの交響曲を目指して、20歳そこそこで原案を
書き始めから推敲&試行錯誤することなんと20年以上、43歳の時に
ようやく完成したそうな。
全体に聴きやすい展開で、下記の通り学生オケにもモテモテ(?)。
第一楽章はズンズン重たく始まりますが、最後は抜けるような明るさと
ハイテンポで高らかにフィニッシュ。
特に第二楽章のアンダンテがおススメ。長い冬(第一楽章)を経て
ようやく温かい春が訪れたような、優しく田園的な旋律が実にのどかに
心癒してくれます。ただし打楽器奏者(ティンパニ)は出番が2回しか
ないので、心地よさにつられて地味に寝落ち注意(←経験者)。
この曲(アマオケの皆さんの愛称はブラ1)は大学4年生の時に
オケサークルの定期演奏会で演奏しました。4楽章クライマックスの
コーダでテンポがずれて分からなくなり、本番なのに全員空中分解寸前に
なったのはいい思い出(笑)
紹介したアルバムはクラウディオ・アバド指揮による1990年版ですが、
他にもたくさん「名盤」とされる録音があるようです。

長い自粛生活が開けて、ようやく青空の下で胸いっぱい深呼吸。
そんなときにふと思い出してほしい名曲です。


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